僕は誰かに目標とされるような、立派な人ではない。
どちらかというと、ああはなりたくないなと思われる方だ。

日光ハイウェイマラソンを一緒に走る予定だった、2人の後輩。
この2人も残念ながら、僕に近い。
類は友を呼ぶ、というやつだろう。

ダメなおっさん3人が集まると、どうなるか。

その見本市が、29日(土)に開催された。
 
 
***

朝4時。
目覚まし時計の音が鳴った。
目覚ましを止めて、安定の二度寝。

今度はスマホのアラームが鳴った。
4時15分。
しばらくまどろんでから、布団から抜け出した。

4時半。
胡散臭い後輩Aから、電話があった。

「起きてますか?」

「ばっちり!」
 
 
その1分後。
初フルマラソンとなる後輩Bから、電話があった。

「起きてますか?」

「ばっちり!」

頼んでもいないのに、モーニングコールをくれる2人の後輩。

そんなに心配されていたのか!
 
 
***

5時半。
後輩Bを乗せた後輩Aの車が、家の前に到着した。

予定通り。
ダメ男3人も今日は気合が入っているようだ。

コンビニで朝ご飯とかを買って、さあ出発。
カーナビの到着予定時刻は、8時ちょっと前。

スタートは9時30分。
駐車場からシャトルバスで移動する事を考えれば、ちょうどいい時間だ。
後は渋滞が発生しない事を祈るのみ。

2時間以上のドライブ。
運転は3人で交代する事にした。
1時間近く仮眠を取れる計算だ。

じゃんけんの結果、最初は僕が運転する事になった。
 
 
***

出発すると、2人の後輩はすぐに寝た。

首都高から東北道に入った。
渋滞は無く、順調だった。

6時半、羽生PAに到着。
カーナビの到着予定時刻は、ほとんど変わっていなかった。

2人を起こした。
トイレを済ませ、後輩Aに運転を変わった。

さっきまで爆睡していた後輩A。
とても眠そうだった。

「大丈夫?」

と聞くと、

「何がですか?」

と、欠伸をしながら答える後輩A。

「眠そうだけど。」

「全然眠くありません。冴えまくりです。」

そう言って、出発した。

ちょっと心配だったけど、またすぐに寝た後輩Bの寝息を聞くうちに、僕も眠りに落ちた。
 
 
***

どれくらい寝ただろうか。
目を覚ますと、車は順調に高速を進んでいた。
 
 
いや、進んでいなかった。
景色が流れていなかった。
渋滞か!

運転席に座っているのは、後輩A。
助手席に座っているのは、後輩B。
2人とも寝ている。

周りには沢山の車が駐車していた。

おや。
もう指定された駐車場に着いたのか。
僕と後輩Bが寝ている間に、ずっと後輩Aが運転して。
 
 
ところで、いま何時だ。
時計をみると、8時を過ぎていた。
やっぱりもう着いたんだ。

いつの間にか、雨が降り出していた。

『やっぱり雨のレースかぁ。』

と思い、覚悟を決めた。

ぼんやりと外を眺めていると、ちょっと違和感を感じだ。

ここ、マラソン会場の駐車場か!?

カーナビを確認した。
 
 
佐野SA!!
 
 
なんとまだ高速の中にいた。

到着予定時刻は、9時20分。

え!?
間に合わないじゃん!
 
 
***

僕は慌てて、2人の後輩を起こした。

「あっ。」

と声を上げた後輩A。

全く状況がわかっていない後輩B。

短い沈黙のあと、後輩Aが言った。

「眠くて、安全のために、サービスエリアに入りました。」

僕も、後輩Bも何も答えなかった。

後輩Aはさらに続けた。

「居眠り運転で、死んでも良かったんですか?」
 
 
長い沈黙。
 
 
沈黙を破るように、後輩Bが口を開いた。

「ありがとうございます!」

寝起きとは思えない、清々しさ。
はたして状況を理解できているのか。

後輩Aのドヤ顔と、後輩Bの希望に満ちた顔に圧倒された僕。

思わず言葉がもれた。
 
 
「あ、ありがとう。」
 
 
***

後輩Bに運転を代わって、目的地を目指した。

もう誰も眠らなかった。

スマホで音楽を聴きながら、鼻歌まじりで運転する後輩B。
僕と後輩Aは外を見ていた。

雨脚は次第に強くなってきた。

走り出してしばらくると、後輩Bが突然絶叫した。
 
 
「ちょっとー!これ絶対間に合わないじゃないですか!」
 
 
ようやく状況を把握したようだ。
 
 
後輩Bの絶叫は雨音に消された。
 
 
3匹のおっさんを乗せたラブワゴン。
その後も、高速を北上した。
極めて順調に。
 
 
 
スタートに間に合わない。
という一点を除いて。
 
 
 
つづく。
 
 
 
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