3人のおっさんを乗せたラブワゴン。
仮眠を十分過ぎるくらいとって、高速をひた走った。

カーナビの予定到着時刻は、9時20分。
そこから着替えてシャトルバスに乗って、スタート地点まで行かないといけない。

スタートは9時30分。

そもそもシャトルバスは、まだあるのか。

送られてきた案内を見たら、シャトルバスの運行時間は6:00~8:30となっていた。

詰んだ。
完全に詰んだ。

駐車場にスタート前に着いても、シャトルバスがない。
 
 
行くだけ行ってみよう。

何故かおっさんたちは、あきらめなかった。

『Did Not Akiramenai』

車内は謎のやる気と加齢臭で満ちていた。
 
 
***

高速の出口は規制の影響もあって、混んでいた。
それでも渋滞は5分程で抜けた。

高速を出たところに、マラソンの関係者らしき人が立っていた。

ここから駐車場までどれくらいかかるか、訊いてみた。
10分くらいという返答だった。

僕らは先を急いだ。

「あっー!」

動き出してすぐに、運転していた後輩Bがまた絶叫した。

今度はなんだ。
僕と後輩Aはびっくりしてたずねた。

「どうしたの?」

「カーナビの予定到着時刻、ピッタリです!」
 
 
カーナビの予定到着時刻は9時25分。
現在の時刻は9時15分。
さっきの関係者はここから駐車場まで10分と言っていた。

確かにピッタリだった。

「おー!」

「ほんとだ!」
 
 
最近のカーナビはスゲーという話で盛り上がる、3人のおっさん。
 
 
もはや、現実逃避としか思えなかった。
 
 
***

駐車場にはカーナビの予想通り、9時25分についた。
やはりもうシャトルバスは無かった。

駐車場からスタート場所までは5、6キロとの事。
走って行っても30分かかる。

あきらめるしかなかった。
 
 
と、その時。

「俺が車で送るので、2人は走ってください。」

後輩Aが言った。

車で行けば10分くらい。
確かに少し遅れるが、走れるかもしれない。

後輩Aは、寝てしまった責任を感じているのか。
 
 
このやろう。
お前にだけ、いい格好はさせないぜ!

「いや俺が送るよ。2人は走りな。俺は先週もフル走ってるし。」

負けずに、僕も言ってみた。
 
 
「ちょっと待って下さい。俺が送りますよ。一番年下ですし。」

後輩Bも言い出した。

何故かお互いに出走を譲りあった。

自分を犠牲にしてまで、他の人には走ってもらいたいのか。

それとも、単に走りたくないだけなのか。

真相は闇の中だが、後輩Bは走った方がいい。
初フルマラソンだし、彼女に完走の報告もしなきゃいけない。

後輩Bに言うと、

「こんなグダグダの初フル、嫌です!」

との事。

うむ。
確かに。
 
 
***

どうぞ、どうぞと譲り合うこと3分。
 
 
「あきらめますか。」

誰からともなく、その言葉は発せられた。
 
 
そこからの行動は早かった。

車でスタート場所に向い、計測チップを返却。
参加賞のバスタオルを貰って、温泉に一目散。

10時のオープン前に到着して、一番風呂を頂いた。
もちろん参加者に配られる、割引を使って。

その後は日光のグルメを堪能し、帰路についた。

日光を後にしたのは、14時くらい。

雨はすっかり上がり、太陽も顔を出していた。
文字通り、僕らを日の光が照らしていた。
 
 
ひとつ気になっていた事があった。

後輩Bは、彼女になんて報告したのか。

「ありのままでー。」

アナ雪の曲にのせて答える、後輩B。
ご機嫌だった。

そして、彼女に送ったメッセージを見せてくれた。

交通事情で、スタートに間に合わなかったと書いてあった。

交通事情なのかは怪しいが、まあいいか。

驚いたのは、その後に書かれていたメッセージだ。
 
 

先輩2人は走るように言ってくれたけど、俺は断ったんだ。
3人でスタートラインに立たなきゃ意味ないからね。

 
 
美談になっていた!
 
 
***

14時に日光を出たのに、東京に着いたのは19時近かった。
大きな渋滞も無かったのに。
 
 
 
途中の佐野SAで、全員爆睡したからなのは言うまでもない。
 
 
 
おしまい。
 
 
 
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