昨日、仕事帰りに髪を切った。

通っている美容室は、家の近所。
ひとりでやっている小さな美容室だ。

オーナー兼美容師の方は、あるカリスマ美容師が経営していた店で働いていたそうだ。
雑誌やテレビなんかに出ていた、カリスマ美容師の店。

「その店でナンバー4でした!」

が口癖。

10人いた美容師の中で、ナンバー4だったらしい。
(カリスマ美容師は除く)

凄いのか凄くないのか、いまいちよくわからない。

でも、ひとりで月に1千万円売り上げた事もあるそうだから、凄いんだろうな。

ひとりと言っても、美容師1人にアシスタントが2人つく。
3人1チームで売り上げた金額のようだ。

多いときは休憩なしで、50人近くカットした事もあるみたい。
 
 
売上至上主義に嫌気がさして、独立したそうだ。
 
 
***

先月。

大田原マラソンの2週間ほど前に、髪を切りにいった。

その時、

「次回来る時は、坊主をお願いするかもしれないです。」

と美容師さんに話した。

「出家ですか?」

美容師さんは真顔だった。
冗談なのか、本気なのかわからなかった。

大田原マラソンで完走できなかったら、坊主にするつもりだとマジメに説明した。

「嫌いじゃないですよ。そういう泥臭いの。」

美容師さんはちょっと上から目線で、応援してくれた。
 
 
***

昨日。

美容師さんはどんな感じにするか聞かずに、カットを始めた。
いつもお任せにするので、最近は何も聞かれなかった。

昨日もそうだった。
 
 
とりとめない事を話しながら、カットをしていると

「あっ!」

美容師さんが、突然声をあげた。

そして、続けた。

「ひょっとして、今日は坊主でした?」
 
 
きたきた!
この瞬間を待っていた。
 
 
「実は・・・。」

僕は焦らすように、間を空けた。

美容師さんは心配そうな顔をしていた。
 
 
「坊主じゃありません!」

ドヤ顔で答えた。

しかし、美容師さんの顔つきは変わらなかった。
 
 
心配そうな顔つきの美容師さんと、ドヤ顔の僕。
鏡越にしばらく見つめ合った。
 
 
***

「あっ、そうなんですか。良かったですね。」

美容師さん、完全に棒読み。

あれれ。
本当に良かったと思ってる?
 
 
ギリギリでゴールした事を話すと、

「そうなんですか!応援に行きたかったなぁ。」

明るい顔つきに戻って、言ってくれた。

「今度の大会はいつですか。」

と聞かれたので、

「フルマラソンは来年の3月。板橋ですよ。」

と答えた。
 
 
すると美容師さん、

「近いですね。応援にいきますよ!ハサミを持って。」

そう言いながら、笑顔でバルタン星人のようにハサミを動かした。
 
 
この人、絶対に僕を坊主にしたがっている!
 
 
『嫌いじゃないよ。そういうベタなの。』

僕は心の中で思った。
 
 
仕上がりはいつも通りの、満足いくものだった。
 
 
この人なら、坊主を任せてもいいな。

そう思っている。
 
 
 
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