温泉へ向かう道中、車内での会話。

オカン:「元気でやってる?」

僕:「うん。」

オカン:「仕事はどう?」

僕:「まあ、ぼちぼちかな。」

オカン:「再婚はしないの?」

僕:「うーん、まだ。」

帰省する度に交わされる、進展のない会話だ。
オトンは無口な人で、大抵黙って聞いている。
 
 
***

オカンの質問攻撃が終わって、車内が静かになった。
眠りを誘う暖かさ。
オカンは後部座席でウトウトし始めた。
助手席のオトンを見ると、目を開けて真っ直ぐ前を見ていた。
てっきり寝ているのかと思ったのだが。

特に会話もないまま、車を走らせた。

「まだマラソンやってるのか。」

オトンがボソッと呟いた。
あまりに突然だったので、ビックリしてオトンの方を振り向いた。
先ほどと変わらず、真っ直ぐ前を見据えていた。
  
 
***

オトンやオカンに走っている事を話してはいない。
正月に帰省できなかった時に、年賀状を送った。
その年賀状に、初めてフルマラソを走った時の写真を小さく載せていた。
元気でやってますよ的な、意味を込めて。
それを覚えていたようだ。

「まだやってるよ。」
 
僕は答えた。

オトンから次の言葉はなかった。
会話終了。
 
 
***

「そうか。続ける事はいいことだ。」

オトンが再びボソッと言った。
恐らく、5分以上間が空いていた。
会話は終わっていなかった。

これは、マラソンを続けている事に対する誉め言葉なのか。
それとも、結婚生活を続けられなかった事への嫌味なのか。

どう返事をしようか考えていると、オトンからまた言葉が発せられた。

「まだまだ、これからだぞ。」
 
 
***

西日が車内を照らしていた。

相変わらずオカンはウトウトしていて、オトンは真っ直ぐ前を見たままだった。

僕はアクセルを少し踏み込んだ。

冬の夕暮れは早い。
 
 

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