皆さん、塀の中に入った事はありますか?

塀の中とは、もちろん刑務所です。

幸いにも俺はまだ入ったことはないのですが、従兄弟が刑務官をやってます。

最近滅多に会わなくなりましたが、昔はたまに会ってました。

会うと刑務所の話をよくしてくれました。

いやぁ、ほんと大変みたいですね。

一筋縄じゃいかない人が多いみたいです。
 
 
***
 
 
さて、マラソンの収容車。

ここにも色々な人がいます。

収容車と刑務所を一緒にするのもどうかと思いますが。

関門に引っ掛かり、係員に収容車の乗り場を教えてもらいました。

乗り場には行列ができていました。

列の後ろに並び収容車を待ちました。

雨がポツポツと降り出していました。
 
 
「足やっちゃったの?」
 
 
俺の前に並んでいた男性が話しかけてきました。

「いえ、体調が悪くて・・・。」

「俺はねぇ、ハムやっちゃった。ハム。」

俺が言い終わる前に、男性が被せてきました。

「ハムですかぁ。それは辛い・・・。」

「そう、ハム。参ったなぁ、ハム。」

ハム太郎(仮称)は、またしても言い終わる前に被せてきました。

ゼッケン番号Aのハム太郎は、ランパン、ランシャツで見るからに速そうな感じでした。

速そうでもあり、寒そうでもありました。

「2週間前にさぁ香港で100キロ走ってるんだよねぇ。無謀だったかなぁ。」

聞いてもいないのに、ハム太郎は話し続けました。

俺も大人なので、

「ウルトラ走ったばかりなのに、フルって凄いですね。」

と調子を合わせておきました。

「俺ってさあウルトラ側の人だから、たまにフルのペースで走るとハムやっちゃうんだよねぇ。」

ウルトラハム太郎は、どんどん饒舌になっていきました。

ずっとこの話に付き合うのかぁ。

と絶望的な気持ちになりかけた時、収容車がやってきました。

助かったぁ。

収容車は大型のバスでした。

もちろん俺は、ハム太郎から離れた所に座りました。

シートに座り毛布に包まって人心地がつくと、睡魔が襲ってきました。
 
 
 
「俺はねぇ、ハム。ハムやちゃったの。」

前方から、聞き覚えのあるフレーズが聞こえてきました。

すっとこどっこいウルトラハム太郎のBGMを聞きながら、俺は眠りに落ちたのでした。
 
 
***
 
 
目が覚めると、バスは既に発車していました。

俺は一番後ろの長いシートの窓際に座っていました。

隣では2人の女性が話していました。

聞く気はなかったのですが、声が大きいので耳に入ってきました。

会話の内容からして、知り合いではないようでした。

2人とも60歳を超えているのがわかりました。

「60歳超えたら、途端に走れなくなったのよ。」

「私もよ。」

そんな感じの会話をしていたからです。

最初こそ走力が衰えていく事を憂える内容だったのですが、やがて会話は自慢大会になっていきました。

「私はどこそこの大会に出て完走したのよ。」

「私なんてあの大会を何年連続走ってるのよ。」

2人の自慢大会はヒートアップしていきました。

興奮のためか、声もどんどん大きくなっていきました。

いくらストライクゾーンの広い俺でも、我慢の限界ラバーズです。
 
 
 
ババア、うるせーんだよ!
 
 
思わず心の中で、毒づいてしまいました。

俺の中の、毒蝮三太夫が目覚めた瞬間でした。
 
 

 
 
***
 
 
今日も読んでいただき、ありがとうございます!
収容車の中ってしんみりしてそうな感じですが、そうでもないんですよね。
遠足に行くバスみたいに、意外とガヤガヤしてます。


にほんブログ村

広告